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2019-01-29

歴史ある筆写素材羊皮紙作りを知る旅-I went to study parchment making-

「羊皮紙」という筆写素材があります。

日本ではあまり見る機会はないのですが、ファンタジー映画に出ているため名前は知っているという人が多いと思います。

市販されている羊皮紙は輸入されているものに限られるためなかなかお目にかかる機会がありません。

自分も長く革を扱っているのですが、羊皮紙との出会いは最近の話です。革屋さんには売っていない素材。

先日にイタリアに行ったとき羊皮紙の工房にて、初めて羊皮紙を目にし記念に端をいただいたのが初めての羊皮紙となります。

そこからこのお話は始まります。

shujiworksは羊皮紙を学ぼうと思いました。


もう少し羊皮紙の説明をします。

羊皮紙とは厳密にいうと「革」ではありません。

革は鞣しという工程をすることにより保存性を付与し、耐熱性と耐薬品性を向上させます。簡単にいうと日常にも使えるようにすることです。

皮は鞣しという工程をしないのですが、羊皮紙の場合は水分量を0に近づけることで腐敗を防いでいます。

用途は記録するためのもの、現在は紙がその大部分を担っているため羊皮紙の出番はほぼありません。

しかし、ヨーロッパや中東では現在も作られ続けています。各国の公文書の記録にも使われています。

昔、羊皮紙という筆写物が出来上がった当初は貴重だったため一般には拡がらず、聖書や地図または楽譜などの特別なモノに使用されました。1000年以上保存できるとされて、過去を記録した貴重な羊皮紙がいまも数多く残っています。

古今の日本ではほぼ使用されていませんが、過去には武士や大名がステータスとして地図を持っていたそうです。一般人には和紙という優れた素材があったため普及はしませんでした。


作り方を学ぶために関連する書籍を捜したり、web上の羊皮紙を集めたり皮革研究者の方々に連絡を取ったりしながら大まかな羊皮紙作りを教わりました。

そして羊皮紙作りを独学している途中で、歴史ある製造方法を使って手作業で羊皮紙を製作しているyuukaさんと知り合うこととなりました。


昔ながらの羊皮紙作りとは石灰漬けによって脱毛や余計な不純物を取り除く羊皮紙の製造方法。

脱毛などは革鞣しの初期工程でもあります。鞣しは石灰も使うのですが脱毛~浸酸あたりまで石灰のみではおこなわれないので、皮がどんな変化を遂げるのかとても楽しみです。

そんな伝統的な羊皮紙作りを学ぶべくyuukaさんと連絡を取り、製作されている現場まで飛びました。

今回はご無理を言い羊ではなく、鹿皮を使いながら講義をしていただきました。(羊皮紙という名がありますが、羊以外にも子牛や山羊などもあります。羊じゃないけど羊皮紙というのは少し変な気がして、獣皮紙という名の方がしっくりくる気がします。ですが、一般的に浸透しているのは羊皮紙なので羊皮紙で統一します)

日本に多数生息しており最近になり活用を見直されてきた鹿皮。猟師をしていることもあり、身近な鹿皮を使って学ばせてもらえないかと御相談さえていただきました。


簡単ではありますが、昔ながらの羊皮紙作りの説明です。


塩蔵された皮(腐敗を防ぐために塩漬けしてある)を水で戻します。

それを飽和石灰水につけて気温により漬け込む日数を決めます。

parchment

強アルカリにつけられた皮は、毛穴が緩み毛が抜けやすくなります。

またアルカリはタンパク質を溶かすので、真皮(コラーゲン層)以外の不要物を取り除きやすくします。

parchment

両手持ちのナイフを使用し、緩んだ毛をこすり取ります。

アルカリで毛根が緩んでいるため抜き易くなっています。

parchment

全部抜きます。

場合によっては表皮も削ります。

parchment

裏面の余分な皮下組織などがあるようだったら削り取ります。肉や血液などは必ず取ります。

また膠等の脂もついていることもあり、それらを取り除かないと不均一な仕上がりと腐敗の原因の一因となります。

parchment

その後、皮紙を張り前まで石灰につけておくそうです。

通常の革の製造に比べ長期間石灰につけておくと真皮部分がこんなにも薄くなるんだと驚きます。

強アルカリが真皮のコラーゲン内の不純物も取り除いているかもと思ってしまいます。予断はできませんが。

parchment

昔ながらの張り機をつかって真皮のみとなった皮を張ります。

シワができないようにテンションをかけていきます。

parchment

張り終わったら水分と余分な脂を取るため、円刀を使って取り除きます。

皮の切らないように適切なテンションをかけることが重要だそうです。

parchment

あとは乾燥をさせて完成だそうです。こちらはyuukaさんの製作した羊の羊皮紙です。

水分が抜けて良い感じの風合いになりました。

鹿皮の羊皮紙もカッコ良くなると良いのですが。

完成が楽しみです。

parchment

今回の旅では歴史ある羊皮紙作りを学ぶことが出来ました。

猟をしている自分として鹿皮で羊皮紙を作ることの意味や可能性を考えながら、yuukaさんに相談しながら学ばせていただきました。

学んだことをしっかりと身に付けるため、東京に帰ったら鹿皮で復習を試みたいです。

そして鞣しで学んでいる製造工程を使った現代版の羊皮紙作りにも着手してみたいと思っています。

講義に写真に送迎に案内などなど本当にお世話になりっぱなしでした。感謝が尽きません、ありがとうございました、yuukaさん。

またyuukaさんをご紹介いただきました素晴らしい羊皮紙研究をされておりますkenjiさま、誠にありがとうございます。

学ばせていただいたことを無駄にしないように製作してみます。

そしてshujiworksの羊皮紙ができたら、yuukaさんやkenjiさんにもみていただけたらなと思います。


雪の積もった羊の丘。

新しい学びの場にドキドキいたします。

学んだことがどのように未来で変化するかわかりませんが、楽しく進んでいけば楽しい場に着くんだろうなーといつも思っております。

また一つ頂いた恩を抱いて、励みにし頑張ろうと誓うのでした。

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