寒さ残る時期のお話。
関東にある皮の買い付けから革の下処理~鞣しまでを同地域の業者間で分担し加工をしている工場群へと行って参りました。
shujiworksは屠られてきた鹿や猪の皮の有効な利用方法を学ぶべく西へ東へ奔走しております。
また皮・革の実験やサンプル作りを始めております。
その実験を行うために今回は手元にある鹿皮の下処置加工の相談に行きました。
合わせてその他の有用な利用方法を模索するためにも鞣し加工の各工程の詳細を知り、新しい可能性の閃きを探しに行きます。
今回は有能な仲間たちも一緒です☆
コラーゲンの勉強を納めた、革の専門であるmatuoくん、靴の企画をしやマーケティングを学んできたakitoくん、絵描きであり、ウェブ含む広告をしているyabuchan。
自分では気が付かないことを教えてもらったり、見たこと聞いたことを違う角度から思考してもらい新しい発想を得たいという想いもあります。また今後の計画を立てるためもあり、一緒に来てもらいました。一緒にできるって素晴らしい☆
一人で出来ることは限られています、助け合うことでできることが膨らみます!もこもこと。
牛や豚などの一般的に流通する皮のタンナーさんの加工ですとある程度の理解はしているのですが、野生の動物となると同じように取り扱う訳にはいきません。業者さんも受け入れづらいのが実情。
哺乳類という同じ仲間ではあるのですが、種の異なる皮(厚さや性質、毛なども)、野生動物ならではの衛生面、運ばれてくる状態(鮮度、確率していない流通方法)などなど理由はあります。
下処理から最終的な加工までなにができて、何かできないのか。自分たちの都合だけでなく、業者さんにとってのメリットやデメリットも。
何が問題になり、それにより出る結果。どんなコストがかかり、仕上がりが満足いくカタチになるのか。より良くするため、問題をどう解決すると良いのか。
自ら動き考え、ネット情報だけでなく声を聞き活きた知識を得て新しいことに挑戦すること、また実験し必要な失敗を繰り返し、仮定を立て検証を繰り返すことがフィールドワークには必要です。
ちなみにこの地域の業者さんたちは埼玉県で狩猟して得た鹿皮や猪皮の加工もされているそうです。
長々となりましたが、ここからは鞣し加工をしている地域のお話です。
ここは、革の下処理(フレッシングや脱毛、脱灰、ピックルなど)を経た皮が鞣し染色、化粧をする場所になります。
工場に着くと、まさに鹿皮を鞣しているドラムを見ることが出来ました。温度管理を高精度で管理できるCP制御付ステンレスドラムを使用しています。
海外から運ばれてきた鹿皮の乾皮(塩漬けでなく乾燥させてもの)を加工していました。
皮の保存方法は塩蔵が主流なのですが、乾皮も一部あると伺ってました。乾皮は長期保存に向くとのことで自分もどこかで実験してみたいと思っていましたのでお話を聞けて良かったです。
鞣し染色したものを乾かす乾燥場です。革は羊革や山羊革で、グローブを製作する材料となるそうです。
グローブ革の凄いと所は、厚さが0.3mmほどしかないのにしっかり張りもありしなやかな作りとなっています。技術の高さゆえにできる革です。
工場を一通りを見学させていただき、その場を離れ次は原皮を扱ったり皮のフレッシング加工をしている工場を案内していただきました。
ここでは糠の酵素を使って脱毛をするとても珍しい技術をもっている工場でした。
脱毛は一般的に強アルカリで溶かす、ケラチンの結合を切る薬品を使うのが一般的です。
姫路に白鞣しをするために川の流れに沈めて微生物に脱毛させるに近いです。
糠槽を土に埋めることによって温度を上げないようにしてあります。
皮を1週間~10日間ほど沈めてゆっくりと脱毛できる時期を待ちます。
薬品を使わないことにより皮を傷めない技術です。
時期が来た皮をかまぼこという台に乗せ、センという道具を使い脱毛をします。
皮を傷つけないようにあまり刃はついてません。
同時に皮の脂もこそぎ取る効果もあるそうです。
一枚一枚を丁寧に脱毛していきます。
センを使い、細かい毛はカミソリなどを使いながら。手作業で少しずつ皮の個性を確認しながら作業を進めます。
年季のいる作業です。少しでも皮に傷がついてしまったら価値がガタ落ちだそうです。
脱毛が終わった皮は再度塩漬けにし、数カ月寝かせながら水分を抜いていくそうです。
よいモノが出来るはずと納得のいく仕事でした。
ここからは自分が持ち込んだ鹿皮のお話。
鹿皮のフレッシングという作業を試しにしていただけることとなりました。
フレッシングとは皮に肉面側を物理的な刃を使って、余計な肉や脂を取り除き革になる部分(真皮層またはコラーゲン層)のみにする工程です。
タンナーさんでは何度も牛は豚をかけているところを見ていたのですが、鹿皮をフレッシングするのは初めてですのでドキドキします。
写真はモノクロにしてありますが、肉部分や血がついています。
これらを今からフレッシングにかけてもらい除去してもらいます。
また革の厚さをある程度揃えてもらう効果もあります。(首あたりの厚い部分など)
グィイイインという回転音とともに鹿皮をフレッシングに入れてもらいます。
2人かがりの作業。皮の大きさにもよるそうです。
鹿皮を一枚あたり4回ほどフレッシングの機械の中に入れます。
出てきた皮はきれいに真皮層のみになっていました。
これで鹿皮の実験を行う下準備ができ、学ぶ機会を得る事ができました。
ありがとうございます。
今まで考えてきたことの下準備も揃い、最近になり実行に移す時期となってきた気がします。
革を始め20年近く経ち、革を皮から学ぼうと猟師を始め5年が過ぎます。生命を奪うことに逡巡しながらも革(皮)を扱う者としてなにか出来ないかなーなにかしなくてはなー考えてました。散らばった可能性を一つ一つ拾い集めて。
自分がいままで経験(革製作者、革の鞣しの研究生、猟師、鹿や猪の解体、化学薬品に携わる仕事などなど)してきたことや意図的に学んできてこれから学んで行きたい道。
あとはより良いモノを作るため日々の積み重ねです。
協力していただきました業者さんには感謝が尽きません。
まだ実験をする期間中ですので、すぐには結果はついてきませんが恩返しができるようなモノ作りをしていきたいと思っております。
これらがどんな風に変化をしていくのか。
楽しみにしていただけましたら幸いです。