少しずつ書き増やしているイタリアで出会った方々のお話。
今回はフィレンツェ郊外にある手縫いの鞄工房のステファノさんのお話を書きたいと思います。
自分はよく思うのですが、工房とは工房の主である方の内面を反映する場所であると。
工房に入るとその方がどんなことを大切にし、これからどんなことをしていこうとしているのか。
工房とはそんな場所であり、その方の内側を覗き見ることができると思っています。
日本はまだ手縫いで製作している工房が多くはないですが、存在しています。
しかしイタリア内において手縫い製法にて革モノを製作している工房はもうほぼないと言って過言ではないそうです。
革の文化が進んでいるヨーロッパでは至る国が同じような現状だそうです。
ミシン化が進み、手縫いで製作する価値が埋もれていく現状。
手道具も製作しているところは数が少なく、ドイツ・イギリス・フランス・あと日本となりイタリアで手縫いを始める場合には道具を海外から取り寄せないといけないのだそうです。
そのせいもありイタリア国内では手縫いで製作する工房はどんどんと減っていき、いまでは革工芸の都フィレンツェでも1軒しかなくなったそうです。
ステファノさんの工房はフィレンツェより車で1時間ほど、小高い丘を越えてオリーブ畑を横目に見ながら進むと工房はあります。
到着し扉をくぐると、ステファノさんとステファノさんのお弟子さんのスイス出身の女性の方がお出迎えをしてくれました。
挨拶をし、日本から来た事と自分も日本にて手縫いでbagや鞄を製作していることを伝えます。
ステファノさんは来訪を喜んでくれ、なんでも聞いてくださいと言ってくださいました。
他国からきた同じ手縫い仲間が嬉しいようでした。もちろんこちらも嬉しい。
工房には所狭しと手道具が並びます。見た事がある手道具も多々あるのですが、初めてみる手道具もいくつかありました。
ステファノさんは日本の浅草橋や蔵前にも行ったことがあるそうで、そこで買った手道具も使っているそうです。
浅草周辺の道具たちが、まさかイタリアのフィレンツェで使われることになるとは驚かされます。
モノ作りをしているとこんな道具が欲しいけどないということもあります。そんなときは職人さんたちは自分たちで道具を改造したりまたは一から作ったりもします。
ステファノさんも同じで、ない道具は自分で製作しているとの事でした。
イタリアでは伝統的なお祭り事などに使用する革のお面を製作するのですが、やはり道具が特殊過ぎるので自分で製作しているとのことでした。
こちらはベルトの裁断型。
手縫いに時間を取られるので、裁断は抜型を使って行っているようです。
全部が全部手作業にこだわることなく裁断に差ができないのであれば任せてしまうという考えからです。
そしたら手縫いをしても時間を浮かす事ができます。より良いものを製作することが出来るのです。
臨機応変も手縫いの工房にとって大切な気がします。
ベルトのコバ仕上げをするお弟子さん。
スイスから単身で修業に来ているそうです。
イタリアでは後世を育てるシステム今なお続いているそうです。
悲しいのですが、日本では弟子入りみたいな制度は廃れ後世が育ちにくい環境になってきている気がします。良いことなのか、悪いことなのか判断はしづらいのですが。
同じ手縫いをするものとして継いでくれる方がいるというのはとても嬉しいことです。
その伝統を続けていけば明るい未来に続く。そのように世の中が動いていって欲しいと切に願います。
こちらは日本でいうところのポニーという道具です。
もう30年以上使っているそうです。
この上で30年以上手縫いをしていると思うと感動します。自分が8歳の時からずっとです。
同じ用途なのに、国によって道具の進化も違うことに驚きます。
その他にイタリアの職人保護の制度や、革事情などいろいろ聞かせていただきました。
国が違うと職人や働き方など全然違うのですね。知らないことがたくさんありました。
他国の事情を知る貴重な時間と日本と対比することによりより日本のことを知るきっかけとなりました。
温かく受け入れてくれましたステファノさん、ありがとうございます。
そんなステファノさんの工房は、やはりどこをみても素敵でした。
またイタリアに来るときは寄らせていただきたいと思います。