世界中のバッグ作りを志す人たちが集まる学校がフィレンツェにあります。
革モノ作りを教えている者として気になるところです、どんな場所でどんなことを教えているのか。
知り合いの方から訪れる機会をいただき、ここイタリアの革の学校に招いて頂きました。
フィレンツェは花の女神フローラのいる街と言われ、ユリをモチーフにした紋章を掲げており伝統的手工業を営んでいる方たちがたくさんいるそうです。
街は時代を重ねてゆくことにより洗練され一切の無駄がない美しい場所となったそうです。作り手の目線でみるモノ作りは、伝統を重んじながらも革新的なデザインに挑む気概に溢れたモノたちに見えました。
そんなフィレンツェの中心的場所に学校はあります。
建物の中に入ると、正面の先生の机を取り囲むように数名の生徒たちが輪を作っていました。
声が聞こえる場所に回り込みなにをしているのかと見てみると、先生が紙上に各自のデザインの指示を与えておりました。
みんな真剣に耳を傾けています。自国を出て自分の好きな革モノ作りを学ぶため、イタリアに住み学校に通う行動力にただただ敬服いたします。
内装はレンガが積まれ重厚な作り、単純な積み上げ方でなくアーチを描き力学に基いたデザインがなされていました。
見知った道具たちが各机の上に用意され、使って貰うことを待ってるように見えます。
教室内から視線を外に向けると、窓からはレモンの木がたくさん植わっているのが見えます。窓が解放されていて心地よい風がレモンの葉と室内の空気をゆっくりと揺らしています
学校のサンプルを数点見せてもらいました。この学校のカリキュラムや教え方の特長などそんなお話も伺わせていただきました。
複雑なデザインのモノから製作を始めることに驚きましたが、期間も限られているため要点をまとめて教えているそんな印象を受けました。
サンプルはミシン仕立てで製作し易いように考えられたデザイン、サイズ変更などの要望にも応えやすい作りになっています。
サイズ感を測る試し用の生地がありました。よく考えられています、時を重ねる(伝統)とは多くの目に晒され試され洗練されることなんだと実感いたします。
製作に没頭している職人さんが居りました。
話を伺うと、今は製本や革を箱に添わせて張るそんな作業をしていました。
一人で革モノ作りと向き合っています、全工程を全て一人でおこない作り上げるそうです。
他にもいろんな職人さんがいらっしゃるそうです。バッグだけでなく革に関わる技術すべてに直に触れられる機会をもらえるそんな印象を受けました。
バッグも靴も製本も箱も紙など、革に関連した技術は多岐にわたります。
それを横繋ぎして学ぶことはなかなかできません。現在の学び方は餅は餅屋のように専門性を重視し考えられがちです。
その垣根を超えていろんな技術を吸収し革モノ作りに打ち込めばもっと面白いモノが出来ると考えていました。同じ革を扱うための技術なのだからそこに無理はありません。
この学校にはいろんな職人さんがいます。垣根を超えやすい環境がそこにあります。
見学をして思うこと。
革というフィールドの中を縦横無尽に行き来して、いろんな技術を統合したモノ作りが出来るようになることが自分のこれからにとって大切な気がしました。
同じ技術を磨くことも大切にしつつ、幅広い技術にも目を向け取り入れることはより輝かせることの近道なのではと。
日本の技術力の高さも決してヨーロッパに負けていません、日本独自の理解とその推し進め方が良い方向に今の革業界を運んだ結果だと思うのです。
まだまだ革で試したいことがたくさんです。これからもどんどんと取り入れて、一歩でも良くしていこうと思います。
自分を取り巻く環境や関わってくれる方々に少しずつ恩返し出来るように。