鹿の解体のお話
山の中で暮らしている鹿やイノシシなどの動物たち。お腹が空いたら食べ、寝て、子孫を反映させている。
生まれてきたから当然として鹿や猪として生きているのだが、人間にとって好ましくないことが多々ある。
木の皮を食べて木を枯らす。農作物を食べて農家の生活を害する。人間の生活区の中に現れ、危害を加えるなど。
近年増えすぎたためその被害も新聞やニュースでよく見聞きする。
なので猟師は駆除という大義名分があり、それを掲げ命を取ることを納得させる。古代のように食が不足し必要に迫られることはあまりなくなった。
自分も猟を始めるにあたりいくつか意味を考える。
猟をする必要性。
仕事がら革にはすぐに行き着く。
「食べるため」は生命を取った後の意味として考えるべきもの。皮のことにしてもそう。
ただ普通に生活しているだけなのにと何度も思う。しかし。
いまだにわからないまま。時代のせいにもしてしまう。
集団猟をして、先輩猟師が雄鹿を仕留めた。
現場に行くと地に伏している雄鹿がいた。
何を見るでもなく開いている眼。不自然な方向に向く足。重さを感じさせる身体。10分前には生きていたのだ。
手際よく口をロープで括り、集まった皆で引っ張って山から降ろす。
自分がいる地域は山で解体することなく、山から下し解体をするための場へと運び解体をする。
車に少し乱暴に乗せて解体場へ向かう。それぞれ、鹿を載せた車についていく。
そこで初めての解体をする。
少しの間、思考が停める。
指示を受けながら解体。
自分は機械のように正確に無駄なく動くことを心がける。ナイフで皮だけを切るように。内にあるまだ見ぬなにかを傷つけないように。
尾側から首近くまで刃を入れ、足首回りを切り、中心に向けて刃を走らせる。皮だけを出来る限り丁寧に剥ぐ。
内臓を掻き出す。入口と出口の繋がりを断ってしまうとあっという間に外に出す事ができる。
鋸で肋骨部を開き、前足を体重をかけ左右に割る。
熱がこもり肉質が落ちないように冷やしながらの作業。
リンパや膜や骨に血に。あまり見たことのないものばかり。
ぐずぐずしない、してはならない。
背ロース、内ロース、もも肉、内臓、タンなど食べられそうなものはすべてわける。
起こってしまった事はすべてにおいて不可逆であり、どれだけ自分が現実的に考え動くことができるのかを試される。
小さく声にならないような声を出す。
これほど集中することがないくらいのめり込む。目の前にあるすべてを吸収する、耳に手に頭に染み込ませる。
何度も自分と鹿が入れ替わった感覚がして、自分だったらこうしてほしい、自分だったらと考える。
そして解体を無事に終える。
一瞬のような、ずっと続くような時間だった。
革のことなんて全然忘れていた。
それからも猟に行き、何度か解体をする。
まだまだ迷う。たくさん迷う。
猟を続ける内はずっとなんだろう。
思うこと。
少しでも繋げることの力としていきたい。
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