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2016-09-20

革を辿って行きつくところ ‐One person fieldwork‐ ④熊の革をなめすこと 皮の準備編

革のことを考える。

生命が宿っていた素材。動物たちの身体は折り重なる命が、少しでも種の繁栄を願い多岐な道を選択し現在に至る。

似せることは出来ても、作ることはできない。

革は生命の強さや幾層にも刻まれた生きた証を見せてくれ、近種であることの親密性と恐れを与えてくれる素材と言える。


革のことを学ぼうと思った理由。

ただ革でモノを作るだけではなく、出来る限り「皮」「革」の学び得たことを伝えていけるように。

なにかが変わる訳ではないが、革を扱う者にとって大切なことのように感じる。

知ることでどこにでもある交換可能なモノではなく、物語が個人的記憶とともに深く残るモノとなる。モノの裏側にある物語、それは誇らしく強くこれからも長く大切にされていく要素になっていく。

難しく考え過ぎとわかってはいるけれど、これからの未来がそんなモノを必要とする世界が良い気がしている。


今回は、熊皮を鞣す(なめす)お話


仕事をしていると先輩猟師の方から電話が入った。

「有害鳥獣駆除にて熊を仕留めたけど、熊の皮はいるか?」

突然の出来事だったので、聴いた言葉をしっかり咀嚼するのに時間がかかり返答に詰る。

そして、カチッとスイッチが入った。

「ください。」 と伝える。


ツキノワグマ。

日本にいる山にいる動物の中で一番大型。

本州や四国に住む熊で胸に白い斑紋を持っていることからツキノワグマという和名をつけられる。

夜行性で雑食。人を襲うこともある。体長は120~180CMほど。

アイヌにはイオマンテという熊を祭る風習があった。少なってきたそうだが、東北のマタギには逆皮という風習がある。

熊を山神からの恵み、また熊自体を神としている。

猟師の解体場所にいくと、桶の冷水にビニール袋でくるまれた「皮」が沈めてあった。

桶から取り出し、袋を広げてみる。

食肉として解体をした跡が残る「皮」。

まだタンパク質が多く残り、それを取り除いてやらないと「革」にすることができない。

現状の皮は、表皮+真皮(乳頭層と網状層)+筋肉組織となっている。

簡単に言うと、筋肉組織がお肉部分。表皮は皮膚で水の浸透や異物の侵入を防ぐ部分。

そして真皮(コラーゲン部分)は表皮と筋肉組織を接合する結合組織部分でこれが「革」となる。

本来はかまぼこという木製の道具で作業するのだが、持っていないのでホームセンターで購入した塩ビのパイプと鉈をつかって筋肉組織を取り除く。

柔らかく掴みどころのない皮なので、しっかりと取り除くことは難しい。思い切ってやると表皮まで届いてしまい穴開きの皮になってしまう。

革をあつかっているせいか少しずつ上手くなっていく。

作業中に邪魔がたくさん入る。

とにかく蝿がすごい。こんなにいるんだーと感心するくらいいる。目を離すと皮が黒く覆われる。また皮に元々いたダニもすごい。目を離すとどんどんと手を登って身体にむかってくる。熊皮には1円くらいの大きさのダニもいた。

そんな邪魔にも負けず1時間くらいで終わると思っていた皮削り(シェービング作業)を4時間半かけて完了する。こんなに長くかかるとは・・(笑)

今回は塩蔵をし、もう少し寒くなるまで保管しておく。

たっぷりの塩を皮の間に挟んで畳んでいく。

梅干しを塩漬けするのと変わらないのだが、皮の方が毛細血管に入っている血液が腐敗しやすいため比較にならないくらいの塩を使う。

そして臭いがもれないように4重の袋にし、今回はここで終了。

へんな体制で作業していたからだいぶ腰が疲れました。あーあ。

冬前には鞣し工程に入る予定です。

ここからは少し違うお話。

皮からでた脂肪を湯煎し、熊脂を抽出します。

熊脂は、皮膚の乾燥を防いだり火傷に聞くとのこと。

なのでせっかくだから採取します。

動物性の脂なのに固まりません。

なので駒込ピペットと使い吸い上げ、フィルターを通して濾過します。

んー獣の匂いがします。

あとは、これを蒸留してみようと考えています。

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